ウサギは切歯(前歯)と臼歯(奥歯)のいずれもが生涯伸び続け、摩耗によって正常な長さを維持しますが、咬み合わせに異常が生じると歯が過剰に伸びはじめ、それに伴い様々な症状を示します。
特に大切なのは食餌です。繊維質の多い牧草をよく噛む事により正しい咬合が保たれます。しかし、ペレット中心のごはんやおやつのあげ過ぎは不正咬合のリスクが高くなります。
◾️症状
過剰に伸びた歯により頬や舌を傷つけ、流涎や歯ぎしり、牧草が食べられない等の口の違和感として表れます。
涎が多いと下顎が汚れたり、脱毛してることがあります。また、前足が汚れている場合も要注意です。
切歯の場合は過剰に伸びてくると飼主様がお気づきになり来院される事もありますが、臼歯の異常はご自宅で確認する事は困難です。
症状がひどくなると食欲不振や採食困難、それに伴い元気の低下や排便量減少などが見られます。
◾️治療
直接口の中を覗いて歯が伸びて頬や舌に当たっていないか、傷がないか等を確認します。
歯が伸びてしまっている場合には過剰に伸びた歯を削る必要があります。
処置を行う際には麻酔や鎮静が必要になる場合も少なくないため、長期的に元気や食欲が低下してしまっている子では麻酔や鎮静によるリスクが高くなる可能性もあります。
また、一度削れば完治するというわけではなく、個人差はありますが1ヶ月前後でまた同様に歯が伸びてきて再度同様の症状を示すケースが多いため、継続して治療を行っていく必要があります。
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臼歯の不正咬合 |
獣医師 岩井
■どんな病気?
草食動物であるウサギは常に食餌を摂る必要があり、消化管の運動や食物の消化、吸収には様々な要因が複雑に関わり機能を維持しています。
消化管のうっ滞は消化管の動きが止まってしまうことですが、単に消化管だけの問題ではなく、不適切な給餌や床材等の誤食、歯のトラブルに伴う痛み、環境の変化によるストレス等様々な原因で消化管の機能に異常をきたす可能性があります。
■症状
・食欲低下や元気の低下
・腹部の張りと痛みによる緊張や歯ぎしり
・排便量の減少や毛で繋がった便等
消化管うっ滞に固有の特徴的な症状というものはあまりなく、上記のように歯のトラブルや泌尿器のトラブル等の痛みを伴う疾患で消化管うっ滞を併発する事も多いため、原因の見極めが重要となります。
■治療
低下してしまった消化管の機能を改善させるために投薬や点滴を行います。
消化管以外の原因により消化管うっ滞を起こしている場合は原因の治療も並行して行う必要があります。
また、治療の一環としてふやかしたペレットや専用の粉状のフードを溶いたものをシリンジを用いて強制的に食べさせる強制給餌を行う場合も多いですが、給餌量やフードの柔らかさ等はお腹の状態により変わってきます。
■予防
牧草などの繊維質を多めにあげることによって、消化器の動かします。そして、水分を必要なだけ摂取できるようにしてあげることも大切です。
また、運動をさせて消化管の動きを助けるとともに、ストレスが溜まらないようにしてあげましょう。
長毛や換毛期中のうさぎであれば、こまめにブラッシングをして、毛づくろいの時に飲み込んでしまう毛の量を減らしてあげましょう。
健康なうさぎは、1日中牧草などを食べているため胃が空っぽになることはなく、正常な胃腸は常に働き続けています。
食欲不振やうんちの大きさや量がいつもと違う場合には早急に動物病院へ連れていきましょう。