抗がん剤治療の怖いを解消!〜お家でできるバイタルチェック〜

近年では動物の高齢化に伴って、腫瘍の患者さんを診ることが増えています。
がんの治療の一つである抗がん剤治療は動物の治療においても大きな役割を果たしています。
抗がん剤治療というと、「怖い」「不安」といったイメージを持たれる方が多いかと思いますが、
抗がん剤の効果や副作用について正しく理解することが重要です。
今回は抗がん剤を治療を受ける前に、また抗がん剤治療中に知っておきたいことをお話ししたいと思います。
1)抗がん剤の効果・副作用について知ろう!
抗がん剤の主な効果は癌細胞の増殖を抑えて小さくする・転移・再発を予防する、症状を緩和することになります。ただし、すべてのがんに効果があるわけではなく、がんの種類や進行度によって効果は異なります、副作用を伴うことにも注意が必要です。
特に、手術では切除できない血液やリンパ腫など全身に散らばるようながん細胞に対しては、抗がん剤は効果を発揮します。
抗がん剤を使う上で避けきれないのが副作用です。
抗がん剤の主な副作用は以下の症状が挙げられます。
抗がん剤の副作用
①消化器症状(食欲不振・悪心・嘔吐・下痢など)
②骨髄抑制(白血球・血小板の減少、それに伴う発熱)
③脱毛(全身性の脱毛、被毛の色や質の変化、髭の脱落など)
特に抗がん剤の導入時(初回投与時)は消化器症状や骨髄抑制には注意が必要です。
2)バイタルサイン(TPR)を測ってみよう!
抗がん剤治療を受けるのに大切なのは、予想される副作用を正しく理解することです。副作用が起きる前にはバイタルに変化が生じる傾向があります。このためには、動物たちのバイタルサイン(体温:T・心拍数:P・呼吸数:R)を定期的に測定することが大切です。特に、抗がん治療後は発熱などバイタルの変化が生じることがあるため、正常なバイタルを知っていることが変化に気づくポイントになります。
バイタルサインは以下のポイントに気をつけながら、測ってみましょう。



呼吸数の測り方はこちら
【観察のポイント】
①体温
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- 具合が悪い、調子がおかしい、と思ったら体温測定、というのは、人間も犬も同じです。
- 愛犬の健康状態をチェックするには、体温は大切なバロメーターになってくれます。
- 少々熱があっても、食欲や元気があれば、少し様子をみて、2~3時間後にまた熱を測り、熱が上がっているようであれば、動物病院へ連れていきましょう。
- 40℃を超えていたら、即刻動物病院へ連れていくようにしてください。
- 犬によって平熱は異なります。健康な時に体温を測る練習を兼ねて、平熱を測っておきましょう。
②呼吸数
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- 熱が出てくると呼吸が早くなってきます。
- 顔つきや呼吸の仕方などいつもと違う様子が見られる時は、動画を撮ることも有効です。
③心拍数
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- 心拍数が極端に多い(頻脈)や極端に少ない(徐脈)は危険なサインです。
- 犬のショック時は頻脈、猫のショック時は徐脈になる傾向があります。
- 余裕があれば、数を数えるときに一定のリズムで心拍を確認できるか(不整脈の有無)をチェックすると良いでしょう。
3)抗がん剤治療時の暴露について
抗がん剤治療中、一緒に住んでいるお子さんやご家族、また同居の動物に影響がないか心配になることがあるかと思います。抗がん剤は使用後排泄物(便・尿)に排出されますので以下の点に注意しましょう。
ペットの排泄物の処理
抗がん剤治療後は少なくとも48時間位は排泄物の取り扱いに注意を払う必要があります。便や尿を片付ける際には、使い捨てのグローブをつけて処理するようにしましょう。また、処理をした後は、速やかにグローブを外し、手洗いを徹底しましょう。
ペットとの接触とスキンシップ
抗がん剤治療後少なくとも48時間は、濃厚なふれあいを避けるようにしましょう。
家庭環境の注意点
ペットのトイレは、食事をする場所から離して設置しましょう。
また、ペットの体液や排泄物で汚れた衣類は他の洗濯物と分けて洗いましょう。
4)まとめ
抗がん剤治療はすべてのがんに適応されるわけではありませんが、うまく取り入れることで、愛犬・愛猫に良い時間をプレゼントできる可能性もあります。もちろん、治療以外にも動物たちが安心して一緒に過ごせるような安全基地の提供も大切です。
抗がん剤に対する正しい知識や対策を知ることで、大切な家族である動物を守るための適切な治療を選んであげましょう。



