犬の膝蓋骨脱臼
犬の関節疾患で多く見られるものとして、「膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)」,通称「パテラ」という病気があります。特に小型犬では子犬の頃から発症することがあり、徐々に進行して歩き方に異常が出る場合もあるため注意が必要です。5頭に1頭の割合で生じるとも言われるほど、発症頻度の高い病気です。
膝蓋骨とはいわゆる「膝のお皿」ともいわれる楕円形の骨で、この膝蓋骨は正常であれば大腿骨の滑車溝というくぼみに収まっています。膝の曲げ伸ばし時にこの膝蓋骨が滑車溝を上下することで、膝関節を滑らかに、まっすぐ曲げ伸ばし出来るようになっています。
膝蓋骨脱臼とは、膝蓋骨が滑車溝から外れてしまった状態のことを指します。主に小型犬に多い内方脱臼と、中・大型犬にみられる外方脱臼があります。脱臼をした状態では、膝をまっすぐ伸ばすことが出来なくなります。
【原因】
先天的には,成長期に骨や靭帯、筋肉の形成に異常が生じることで発症するケース、あるいは小型犬は遺伝的素因があると考えられています。
また、後天的には、外傷により膝関節に強い力がかかった場合に発症します。
【好発犬種】
内方脱臼:チワワ,ポメラニアン、トイ・プードル、パピヨン、ヨーキー
外方脱臼:ミニチュアダックス、大型犬
【症状】
・歩行時や走行時に突然後ろ足を上げて、スキップするようになる
・寝起きに後ろ足を上げたり、後ろに伸ばす動作をする
・散歩をあまり喜ばなくなる、長距離を歩かなくなる
・背中を丸め、膝を曲げたまま歩く
・膝を曲げ伸ばしすると、パコッという感触がある
・膝からポキポキ音がする
・後肢で立たせた時、または後ろから見た時に左右の足の角度が違う
・足を引きずる、痛がる、歩けない
【治療】
膝蓋骨脱臼は4段階のグレードに分けられ、軽度なものは内科的・保存的治療、中等度なものは外科的治療になります。
症状が徐々に進行する場合もあるので、定期的に病院でチェックが必要です。
【内科的治療】
・体重管理:関節への負担を軽減する
・安静:炎症や痛みのある時には散歩等の運動を中止する
・薬物療法:抗炎症薬、鎮痛薬、サプリメント(関節炎予防)
・環境配慮:床を滑らないように、ソファー等にはスロープを設置
【運動について】
膝蓋骨を支えるための筋力維持や体重管理のために散歩は大切ですが、膝に負担がかからないように、滑らない段差のないところで,出来れば芝生や土の上など少しクッションのある地面をまっすぐゆっくり歩くようにすると良いでしょう。
膝に大きな力がかかるような運動や膝をひねるような運動は、膝関節に負担をかけ脱臼を起こしやすくなります。ジャンプや激しい運動、ピョンピョンと飛び跳ねたり、クルクルと回ったりさせることは避けましょう。急な方向転換も、膝に無理な力がかかるので注意が必要です。
散歩や運動の量に関しては獣医師にご相談下さい。