うさぎが食べない!もしもの時の「強制給餌」の方法と注意点
なぜ食欲がなくなるの?考えられる原因
うさぎさんがご飯を食べなくなる背景には、様々な原因が考えられます。
- 歯の問題(不正咬合など): 歯が伸びすぎたり、噛み合わせが悪くなったりすると、痛みや口の動きが制限されて食べられなくなります。
- 消化器系の問題(うっ滞、鼓腸症など): 毛球症や異物の誤飲、ガスが溜まるなど、お腹の不調が原因の場合。
- 痛みや不快感: ケガや病気(腎臓病、肝臓病、腫瘍など)による痛みや体調不良。
- ストレス: 環境の変化(引っ越し、新しいペット、騒音)、気温の変化、不適切な飼育環境などが原因となることも。また、これらが複合して発生することも多いです。
食欲不振に気づいたら、様子を見ずにすぐに受診することをおすすめします。 原因を特定し、適切な治療を受けることが最も重要です。
強制給餌(シリンジ給餌)とは?
強制給餌とは、病気や体調不良で自力で食事が摂れなくなったうさぎさんに対し、シリンジ(針のない注射器)を使って流動食を与えることです。生命維持に必要な栄養と水分を補給し、食べないことでさらに消化管の動きが悪くなることを防ぎます。
強制給餌の準備
獣医師に指示されたら、以下のものを準備しましょう。
- フード: 普段お使いのペレットをぬるま湯でふやかして作ります。硬さは獣医師の指示に従ってください。ヨーグルト程度の硬さが一般的です。専用の粉末状のフードも処方可能です。
- シリンジ: 口に入れやすいよう、先端が細長いものを使用します。給餌量はうさぎさんの体格やお腹の状態に合わせて選びます。
- ぬるま湯: 流動食を溶かす用。冷たくなく火傷しない程度。
- バスタオル: うさぎさんを保定する用。フリースのような伸展性のある生地のほうが使いやすいかもしれません。
- 落ち着ける場所: 静かで安心できる場所で行いましょう。
*実際にお渡しするシリンジや粉末フードです。普段お使いのペレットをふやかして作っても構いません
強制給餌の基本的な手順
《準備》
- 流動食を指示された濃度・温度(人肌程度)で用意します。作り置きはせず、毎回作りましょう。
- シリンジに必要な量を吸い上げ、空気を抜いておきます。直接吸い上げてもいいですし、反対側から詰め込んで充填してもOKです。
- うさぎさんがリラックスできる静かな場所に移動します。
《保定(うさぎさんを安全に支える)》
- うさぎさんが暴れないように、落ち着いて優しく、確実に保定します。
- 床や低いテーブルの上で、飼い主さんの膝の間に座らせる、またはタオルで体を優しく包む「みのむし」のような状態にするのが一般的です(バニーブリトーとも言います)。高い台の上では飛び降りてケガをする可能性があります。
- うさぎさんの体を必ず自然な姿勢(四肢が地面につく状態)に保ちます。
*平らな場所でタオルを広げて上に乗せます
*手が出ないように首から背中を覆います
*反対の端も同様に背中を覆います

*お尻から逃げないように後ろからも覆います。このまま両足で軽く挟むようにして体を持ちます。興奮してしまうようならケガのリスクを考慮して無理に押さえつけず一度放したほうが安全です。
《シリンジの挿入》
- 利き手でない方でうさぎさんの頭を優しく支え、正面を向かせます。利き手はシリンジを持ちます。
- シリンジの先端を、横の唇(前歯の後ろの歯のないスペース)から、前歯を避けて奥へ向けてそっと差し込みます。
《給餌》
- ごく少量(0.1~0.3ml程度)ずつ、ゆっくりと流動食を注入します。 うさぎさんが「もぐもぐ」と口を動かし、飲み込むのを確認してから、次の一口を注入します。焦りは禁物です。
- 一度に大量に入れると、誤嚥や窒息の危険があります。ペースはそれぞれなので、スムーズに飲み込むようなら無理なく少しずつ1回あたりの注入量を増やしても構いません。
- もし嫌がって口から出してしまっても、慌てず、少し休憩してから少量ずつ再開しましょう。少し放したり歩かせてあげたりするとまた飲み始めることもあります。
《終了とケア》
- 指示された量を食べさせ終え、口の周りが汚れていたら優しく拭き取ります。
- 強制給餌とあわせて投薬が必要な場合がほとんどなので、うまく飲み込めそうなら給餌と同時に行っても構いません。
- 頑張ったうさぎさんをたくさん褒めて、安心させてあげましょう。
- 使用したシリンジはよく洗浄し、清潔に保管します。
《強制給餌の際の重要ポイント・注意点 》
- 獣医師の指示を最優先に: 与える量、回数、流動食の濃度、期間などは、必ず獣医師の指示に従ってください。
- 誤嚥させない: 最も注意すべき点です。うさぎさんの顔を上げすぎず、必ず自然な姿勢で、少量ずつ、飲み込むのを確認しながら与えましょう。むせたり、苦しそうな呼吸をしたりしたら、すぐに中断し、獣医師に連絡してください。誤嚥性肺炎は命に関わります。
- 無理強いしない: 激しく抵抗したり、極度に怯えたりする場合は、無理に行わず、獣医師に相談しましょう。抵抗時に無理に押さえつけると骨折のリスクもあるので、嫌がるときは一度放してあげてかまいません。
- 焦らない、怒らない: 飼い主さんの不安はうさぎさんに伝わります。落ち着いて、優しく接してあげてください。時間がかかっても大丈夫です。
- 衛生的に: 作る際の手指の消毒、器具の洗浄を徹底しましょう。
- 体調の変化を観察: 給餌中の様子(呼吸、嫌がり方)はもちろん、給餌後の体調の変化も注意深く観察しましょう。
まとめ
強制給餌は、飼い主さんにとっても、うさぎさんにとっても負担のかかる行為です。しかし、愛するうさぎさんの命を繋ぐために、必要な処置となる場合があります。
一番大切なのは、食欲不振に気づいたらすぐに診察を受けること、そして、強制給餌が必要になった場合は、落ち着いて、愛情を持って行うことです。
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