皆さん“ダニ“と聞くと家の中の布団、食品に発生するダニを思い浮かべるかもしれませんが、それはヒョウヒダニやコナダニといった種類のダニです。ワンちゃんネコちゃんに関わってくるダニは”マダニ”というものであり、今回はこの、ワンちゃんネコちゃんに関わるマダニについてお話しします💡
◾️マダニとは?
犬猫に寄生する主なマダニ(フタトゲチマダニ)だと吸血前は約3-8mm、吸血すると約1-2cmにもなります)。
マダニは森林や公園草むらなどで待ち伏せし、そばを通りかかった動物や人間に飛び移ってセメントのような物質を唾液と共に分泌し、それによって動物にくっついて寄生をスタートします。
◾️マダニはどこに寄生する?
マダニは動物の体表に寄生しますが、特に毛が薄い部分(顔まわり、胸、内股、お尻周り)に寄生することが多いです。
マダニは動物に対して、セメントのような物質でくっついており、無理に引っ張ってしまうと頭部だけが動物の身体に残ってしまい、化膿するかもしれません。
もしマダニが寄生しているのを見つけたら、自分で取ろうとせずに病院へ連れてきてください。
◾️マダニのライフサイクル
マダニは卵→幼ダニ→若ダニ→成ダニ→産卵というライフサイクルですが、幼ダニ・若ダニ・成ダニの全ての発育段階で1回ずつ吸血を行います。
このように、ダニは生まれてから生涯を終えるまでに3回も吸血します。
また、十分に吸血したメスの成ダニは一匹で2000個もの卵を産むと言われています。
◾️マダニに寄生されると起こること
マダニが多数寄生することにより、貧血になってしまうことがあります。また、マダニの唾液に反応してアレルギー性の皮膚炎が認められることもあります。さらに、唾液の中に様々な病原体を持っていて、吸血時にその唾液を介して動物に様々な感染症を運んできます。
◾️マダニが運んでくる病気
【バベシア症(犬)】
バベシア原虫(非常に小さい寄生虫で、肉眼では見えません)はマダニの体内におり、マダニが吸血することで犬に感染します。バベシア原虫は犬の赤血球に寄生し、それにより貧血をはじめとした発熱や黄疸、血小板の減少など、様々な症状が現れます。
【エールリヒア症】
エールリヒア属リケッチアによって引き起こされます。犬が感染すると、食欲不振、発熱や貧血、鼻汁(出血)、肝臓が腫れる肝腫大などをはじめとし、慢性期には眼の症状や血球減少症などといった、重篤な症状が見られます。
【重症熱性血小板減少症候群(SFTS)】
現在最も注意すべきは重症熱性血小板減少症候群(SFTS)と呼ばれる病気です。2011年に特定されたSFTSウイルスがダニによって媒介される感染症であり、動物だけでなくヒトにも感染する人獣共通感染症です。
SFTSはマダニから動物や人への感染だけでなく、SFTSを発症した犬や猫などから咬傷や濃厚接触によって人へ感染したり、SFTSに感染した人から人への感染が確認されており、人の死亡報告も何例かあります。
現在日本では犬、猫、チーターがSFTSを発症した動物として報告されています。発症した場合の症状は、人と動物で似ており、発熱や食欲低下、消化器症状です。犬は人よりも症状が軽いですが、猫の致死率は約70%とも言われています。
〜ヒトでのSFTS〜
2022年7月31日時点での報告では、国内で763名の患者が報告されており、そのうち92名が亡くなっているという非常に怖い感染症です。詳しくは国立感染症研究所のホームページをご覧ください。
◾️さいごに
マダニ対策は、ワンちゃんネコちゃんを守ると同時に、ご家族の身を多くの感染症から守ることにも繋がるため、是非予防してあげてください🐶🐱
予防薬は色々な種類があるため、ぜひご相談ください。🏥
このたび能登半島を震源とする大規模地震により犠牲となられた方々に心よりお悔やみ申し上げるとともに、被災された方々、どうぶつ達に心よりお見舞い申し上げます。
我々の動物病院が位置する関東地方においても、首都直下型地震や南海トラフ地震といった大規模災害が近い将来起きる可能性は低くないと言われています。
災害時の物資や避難所の設備等はどうしても人間が優先になってしまうため、どうぶつ達に対する災害時の支援はまだまだ手厚いとは言えないのが現状かと思います。
そんなときに大事なのが、普段からの防災用品の備えです。
この機会にぜひご自宅の防災備蓄品を確認してみてください。
【常に備えておくと良いもの】
☑︎ 食べ慣れているお食事、飲料水
☑︎ ペットシーツやビニール袋などのトイレ用品
☑︎ キャリーケース(そのまま寝床として使用できるハードケース)
☑︎ 常備薬(特に持病のある子)
☑︎ 毛布などの防寒具
最低でも上記のものは少し日数に余裕を持って備えておきましょう。
ペットシーツはバケツやビニール袋と合わせることで人間用の非常トイレとしても活用することができます。
そのほかにも備えておくと安心なものはたくさんあるので、NPO法人「全国動物避難所協会」理事長の奥田先生が監修された記事をご紹介しておきます。
ご興味のある方はぜひ読んでみてください!
あなたのワンちゃんネコちゃんは健康診断を受けたことがありますか?
動物には人とは決定的に違うところがあります。体調不良を隠すのが上手であるワンちゃんネコちゃんは自分の体調の変化を話すことができないため、ほんの数日調子が悪いとご家族が診察に連れていらっしゃって検査してみると、実はかなり病気が進行している状態だった、という事も少なくありません。
また、1年間で、私たち人間の何倍も歳をとっていくワンちゃんネコちゃんへ定期的に健康診断を受けさせてみませんか?
健康診断を受けた方がいいことは分かるけど、どんな検査をするの…?という疑問にお答えすべく、今回は健康診断【ドッグドック】の検査にはどんなものがあるのかをお話しますね🩺
◾️身体検査🐕
最も基本的な検査ですが、その子をみて(視診)、触ること(触診)で多くの情報を得ることができます。例えば体重を測る、口の中の歯や歯肉をチェックする、眼や耳、皮膚、四肢の状態などに気になる点はないか、などを見ていきます。また、聴診器で心臓や肺に雑音がないか(聴診)、お腹を触って(触診)異常がないか診ていくことも重要なチェックポイントです。
◾️血液検査💉
春のドッグドックでは、フィラリア抗原検査の他に内臓機能19項目が一緒に調べられます‼️
肝臓や腎臓の数値など内臓の機能状態を調べることが出来ます。
ここで何か異常が見つかった場合は、次に説明するレントゲン検査や超音波検査なども組み合わせてどこにどのような異常があるのか、詳しく探っていくことになります。
また、今年から設置されたオプション シニアコースでは、甲状腺ホルモン測定や糖尿病マーカーなどシニア期に多い病気も一緒に調べられます💡
◾️レントゲン検査🩻
オプションでレントゲン検査も行えます。
健康診断のときに撮影するのは通常、胸(胸部)とお腹(腹部)の部分です。
胸部レントゲンでは首から背中にかけての骨・肋骨や、心臓などの胸の中にある臓器の異常がないかを知ることができます。腹部のレントゲンでは、同じく骨の様子やお腹の中にある臓器を調べます。レントゲン検査では、本来なら写ってこないはずのものが写っている、逆に写るはずのものが写っていない、正常と比べて臓器の大きさや形、場所が違う、などといったことが分かります。
以上が健康診断のときに行う、主な検査項目です。
若い年齢なのか高齢なのか、気になる症状がないかなど、必要に応じてこの項目から減らしたり、増やしたりして検査を行います。
健康診断『ドッグドック』の結果は、獣医師が身体検査や血液検査の結果をもとに次回の検査時期や追加検査の有無などコメントを書いてご郵送します💁♀️
◾️健康診断をうける頻度は?
若いうちは年に1回程度、シニア期になってからは年2回、健康診断をうけることをおすすめします。また、健康診断は人と同じように絶食をオススメしてます。
◾️もうひとつ健康診断の大切なポイント💡
もうひとつ健康診断の大切なポイントは、その子の健康な時の検査結果を知っておくということです。ワンちゃんネコちゃんにも個体差はあるので、私たちは“その子の健康な時の値”をできれば知っておきたいです。
例えば調子を崩して検査をしたワンちゃんで、肝臓の数値が基準値より少し高かったとします。もし過去に何度か健康診断を受けており、その時も肝臓の数値が少し高かった場合、元々肝臓の数値が少し高いワンちゃんだったな、今回の体調不良と肝臓の数値は必ずしも関連していないかもしれない、と系統立てて考えることができます。
このように1回だけの数値を見るよりも、以前との比較をすることで色々な情報を得ることができるのです。
健康診断には病気を発見するという意義だけでなく、ワンちゃんネコちゃんが健康であることの確認をする、そしてその健康の時の状態を把握しておく、という大事な意義もあります。あなたのワンちゃんネコちゃんが元気で長生きできるよう、私たちもお手伝いしていきますね。気になることがあれば、お気軽にご相談ください🏥
他にも様々な検査項目があるますので、詳しくはこちらもご覧ください🐶
参考文献:ペットクリニックハレルヤ 平川 篤先生
フィラリア症は別名「犬糸状虫症」と呼ばれ、一般的にはワンちゃんが気を付けなければならない病気として知られています。じつはこのフィラリア症、猫ちゃんにもかかる病気であることをご存知ですか?
今回は、猫のフィラリア症についてお話しします。
詳しくはこちらから
■どんな病気?
ねこちゃんで起こる人の風邪に似た症状を示す上部呼吸器感染症です。
鼻水やくしゃみなどの風邪のような症状が出るだけではなく、重症化すると肺炎を起こし、最悪死に至ることもあります。
■原因
猫ヘルペスウイルスⅠ型の感染が原因で、免疫力の弱い子猫やお年寄りの猫で多くみられます。
感染したねこちゃんの唾液や鼻水、目やに、飛沫などによって感染が起こります。
また、猫カリシウイルス、各種細菌、クラミジア、マイコプラズマなどと混合感染してる場合は重症化しやすいです。
■症状
・くしゃみ、鼻水、涙が出る
・目やにが多くなる、目を開けづらそうにする
・口を痛がる、ヨダレが出る
・食欲、元気がなくなる、発熱がある
・呼吸困難
■治療法
症状に応じて内服薬や点眼薬、点鼻薬、ネブライザーによる吸入などを用います。
抗ウイルス作用のあるインターフェロンというお薬や、二次感染を抑えるために抗生剤を用いて治療を行います。
食欲がない子には、点滴や食欲増進剤などの補助療法も行います。
重度の結膜炎で結膜の癒着が癒着した場合は、手術によって癒着の剥離などが必要になることもあります。
■予防法
ヘルペスウイルスの特徴として、一度感染するとウイルスが生涯ねこちゃんの体の中に存在し続けてしまいます。一見良くなってもストレスや免疫力の低下がきっかけで再発することも多いです。
これらの病気は混合ワクチンの接種によって予防が可能ですので、ワクチンをうってしっかり予防してあげましょう。
多頭飼いの場合には、他の子への感染を防ぐために、食事や水のお皿を分けたり、次亜塩素酸でのこまめな消毒を行いましょう。
子猫や高齢猫は免疫力が弱く重症化しやすいので、早めの治療が必要になるので、早めに病院を受診しましょう。
また、同じような症状が見られても、原因が歯の異常であったり腫瘍であったりする場合もあるので、病院でご相談ください。
獣医師 飛田