デンタルケアシリーズ④ 〜歯石除去(スケーリング)についての疑問を解決〜

動物たちもは私たち人間と同じように、定期的な口腔ケアが必要です。特にスケーリングは、歯石除去と口腔衛生の向上に不可欠な処置です。
スケーリングとは、歯にたまった歯石を専門の器具で取り除く処置のことで、歯の疾患を予防するために必要です。歯の疾患を引き起こすと歯だけでなく全身の健康にも影響を及ぼすため、普段からご家庭で歯のお手入れを行うことが重要です。 今回はこれからスケーリングを受けようと考える方にわかりやすく、スケーリングの疑問ついてお話いたします。
スケーリング(歯石除去)とは?
スケーリングは全身麻酔下で行う専門の器具を使用して行う歯のクリーニングになります。
スケーリングは歯の表面だけではなく、歯周ポケット内の歯垢・歯石を除去し、最後にポリッシング(研磨)して歯の表面を滑らかにすることで、歯の表面に汚れがつきにくくするように磨く処置を行います。
下の写真がスケーリング実施前と実施後の写真です。

スケーリング前

スケーリング後
歯がピカピカになっていることがわかるかと思います。
スケーリングの流れは?
1麻酔前検査:健康状態を確認(血液検査、エコー検査など)
2全身麻酔の実施
3口腔内評価:
- レントゲンで歯周病の進行度確認
- プローブで歯周ポケットの深さを測定
- 歯周病の進行に応じて処置計画を決定
4歯石除去(スケーリング)
専用器具を用いて、歯に付着した歯石を除去



5抜歯(必要な場合):
- エレベーターや抜歯鉗子で抜歯
- 抜歯後は縫合処置


6ポリッシング(研磨):
- 歯の表面をツルツルにして汚れの再付着を防ぐ

7痛み・感染管理:
- 局所麻酔や抗生剤を使用する場合あり
8術後ケア:
- 抗生剤・鎮痛剤投与
- 抜歯後は硬い食べ物を避ける
- 縫合は溶ける糸使用で通常抜糸不要
スケーリングを受けた方が良いタイミングは?
まずは診察にて、歯石の付着程度や歯肉の炎症度合いを確認します。また、口臭が以前に比べ強くなってきたことも、歯周病が進行しているサインになります。このような症状を認める際は、スケーリングを考えると良いでしょう。
どのような歯が抜歯が必要なの?
毎日口腔ケアをしていても、歯周病の進行により抜歯が必要な歯が出てきます。グラグラ動揺している歯だけでなく、レントゲンで歯の根っこに膿が溜まっている、顎の骨を溶かし始めている歯も抜歯が必要になることがあります。
抜歯してもご飯は食べられるの?
抜歯後はしばらく硬い食べ物を避ける必要がありますが、時間と共に元のフードを食べられるようになります。ただし、すでに歯を何本も失っている動物や高齢動物は、フードの切り替えが必要になることがあります。そのため、抜歯後の食事や生活に関しては、慎重に対応することが大切です。
無麻酔で歯石を取ることはできないの?
当院では全身麻酔下での歯石取りを推奨しています。
無麻酔での歯石取りの処置は、歯周病の一番の原因となる歯周ポケット内の歯垢を効果的に取ることができません。一見歯石がついてないような歯でも、歯周病が進行し、抜歯の対象になることもあります。また、無麻酔下での処置はその子に恐怖心や痛みを与えてしまう可能性があり、口を触ることをますます嫌がるようになることもあります。
当院では麻酔前の検査を行うことで、最低限の体の負担で処置が可能です。
まとめ
- 歯磨きだけでは歯石は取れないため、全身麻酔下でのスケーリングが基本!
- 歯石だけの除去ではなく 歯周ポケットの清掃・研磨 が歯周病予防にとって重要
- 早期対応と定期ケアが、口腔内だけでなく全身の健康維持につながる
スケーリングの不安は解消されましたか?スケーリングは近年、歯周病菌が血液を巡って心臓病や腎臓病などを悪化させる可能性が示唆されているため、積極的に実施する価値が高い処置だと考えています。 スケーリング実施をご希望の場合、各種検査を通して麻酔リスクを判定し、実施の可否についてはオーナー様とご相談の上、決定させて頂きます。ぜひお気軽に当院にご相談下さい。




