デンタルシリーズ③ 〜実は歯周病が原因の病気3選〜

歯周病は、歯の周りの組織に細菌が感染することで引き起こされる炎症性疾患です。
「口臭が気になってきた」、「固いものを食べづらそう」などの症状があれば、もしかしたら歯周病かもしれません。今回は、ご自宅でできる歯周病のチェックリストとともに、実は歯周病が原因の病気や体への影響についてお話しします。
実は歯周病が原因の病気3選
①鼻水・くしゃみ
鼻水・くしゃみというと、風邪を引いたのかもと思いがちですが、実は歯周病が原因であることがあります。
特に犬や猫の犬歯は歯肉から見えている歯以上に根っこが深く、歯槽膿漏を起こすとその炎症は鼻腔にまで波及します。
この事により、鼻腔から緑がかった膿性の鼻水、出血、くしゃみをする様になります。
②顔の腫れ
顔の腫れはアレルギーや口腔内の腫瘍でもみられることがありますが、先ほどの鼻水・くしゃみと同様に歯が原因で顔が腫れてしまうことがあります。腫れは突如として起こり、ひどい場合は腫れた部分に穴が空き、血膿が出てくることもあります。(歯槽膿漏)
歯槽膿漏が起こる仕組み
歯が割れたりすることで歯髄内に細菌感染が起こると、歯の根っこの部分に根尖周囲病巣を形成します。病巣部に膿などが溜まってくると、瘻管を形成し、皮膚や歯茎に穴があき、排膿所見がみられるようになります。


歯槽膿漏には頬から膿が出てくる外歯瘻と歯茎から膿が出てくる内歯瘻があります。
かなり痛みを伴うため、状況によっては食欲や元気が落ちてしまう場合もあります。
顔面の腫脹

歯槽膿漏による外歯瘻

歯槽膿漏による内歯瘻

③間接的に心臓や腎臓への影響も
動物でも人と同様に歯周病は心臓や腎臓疾患の原因になりうると言われています。歯周病による細菌が血管に侵入し、各臓器に運ばれることにより起こります。歯周病だけが原因とは言い切れませんが、『年に1回の歯垢・歯石除去で死亡リスクが18.3%低下する』と言われています。
つまり、歯周病予防はメリットしかないと言っても過言ではありません。ただし、高齢のため麻酔をかけるのには不安がある、心配という飼い主様も多いかと思います。そのため、以前はトリミングサロンなどで、麻酔なしでの歯石除去が行われていましたが、その処置は獣医療的には歯周予防効果はないと言われています。
ご自宅でできる歯周病チェックリスト

歯石や口臭が気になるけれど、高齢で麻酔下での歯科処置を迷われている飼い主様は、当院のスタッフまでご相談ください。
歯周病チェックリストに該当する項目の多いわんちゃん・猫ちゃんはこれを機に病院で歯の健診を受けてみましょう。