シニア期の過ごし方シリーズ⑥ 〜犬の認知症について〜

高齢になってくるとみられる症状として挙げられるのが、犬の認知障害です。夜泣きや徘徊がよくみられる症状になりますが、中には認知症であったと気づかない症状もあります。認知症の取り組みには早期発見・早期アプローチが大切です。
家でできる認知症のチェックリストと認知症になった時のケアや心構えについてお話ししたいと思います。
犬の認知症の症状には以下の6つのカテゴリーに分けられます。我が子に当てはまる症状がないか確認してみましょう!
犬の認知症のチェックリスト
見当識障害 Disorientation
□狭いところに入り込んでしまい、立ち尽くしてしまう
社会的交流の変化 Social-environmental Interaction
□名前を呼んでも反応がない
□攻撃性が増す
睡眠サイクルの変化 Sleep-wake cycle
□昼夜逆転
□夜間に吠える
不適切な排泄、学習と記憶の変化 House soiling ,learning and memory
□トイレの場所がわからなくなる、失敗する
□以前できていたコマンドがわからなくなる
活動性の変化 Activity
□同じところをグルグルと歩き回る
□何もない空間へ吠え続ける
不安 Anxiety
□飼い主と離れた時の不安が強い
□視覚・聴覚刺激に対して過剰に反応し、怖がる
中でも不安症状は認知症発症犬の61%に見られると言われています。
認知症のセルフチェック(DISHAA質問表)に関してはこちら
認知症の時に必要なケア
チェックリストに該当する項目が多い場合は認知症傾向にあると考えてもよいかもしれません。ただし、認知症症状と思っていた原因には身体疾患(皮膚疾患、腫瘍疾患、てんかんや頭蓋内疾患など)が隠れていることがあります。まずは血液検査などを行い今の状態を確認をすることが大切です。また、認知症かの判断迷う際には動画などを撮影して獣医師に確認してもらうのも一つです。
認知症の治療は残念ながら完治できません。治療は進行の抑制や症状緩和といった対症療法が主体となります。
このため、認知症には多角的なアプローチが大切になってきます。
認知症の我が子にしてあげるケアに関しては以下のものが挙げられます。
【初期の認知症】
サプリメントの導入
認知症にはオメガ3脂肪酸の摂取が有効と考えられています。オメガ3脂肪酸が脳の血流の改善に働くためです。
初期の認知症におすすめの商品に関しては、こちらのリンクを参考にしてください。
飼育環境の整備(規則正しい生活や散歩・歩行の補助)
認知症では昼夜が逆転すること多くなる傾向にあります。日中寝ているので我が子を起こしてまで散歩に連れて行くのはと考えがちですが、それは間違いです。朝日光を浴びることによって、睡眠を調節する「メラトニン」が分泌されると言われています。適度なお散歩をしないと、このメラトニンが分泌されず昼夜が逆転し、夜徘徊、昼間は寝るといった悪循環に至ることがあります。
また、日中の散歩で適度な運動することも大切です。高齢になると足腰が弱り散歩の時間が短くなることがあります。筋力の低下予防のためにも、完全に寝たきりになる前に腰を支えるハーネスや車椅子の導入などを検討すると、散歩による楽しみというペット自身の尊厳を守ることにも繋がります。歩行の補助として滑り止め靴下やトーグリップスの導入も有効です。それでもうまく歩くことができない場合は、カートに乗せてお散歩するというのも一つです。

【進行した認知症】
上記のことを行なっても、認知症が進行すると、夜泣きや徘徊、それに伴う排泄物の処理など、飼い主さんの負担もかなり大きくなることがあります。その際には以下のケアを考えていきましょう。
抗不安薬や睡眠導入剤の導入
夜泣きに関しては、就寝前の抗不安薬や睡眠導入剤を使用することで、ペットの不安軽減や飼い主さんの負担も軽減できることがありますので、一人で抱え込まずに獣医師にご相談ください。
排泄物のケア・床ずれのケア
認知症が進行してくると、徘徊できる状態では排泄の管理が深刻な問題になります。排泄のケアに関しては、ビニール袋付きのオムツ(ウンポパンツ)の導入などを参考してみてください。徐々に足腰が悪くなり、自力で立てなくなると、対位変換ができなくなるため、床ずれなどの症状が見られます。床擦れしにくい素材を敷物として使用し、定期的に体位変換をするようにしましょう。また、床ずれが起きやすい場所を理解しておくのもポイントの一つです。

我が子が認知症になった時の対応・心構え
子供のように接していたペットの変化は飼い主さんにとっても悲しいことかもしれません。高齢動物のお世話は思っている以上に飼い主さんやペット自身の身体的・精神的なグリーフを産むことがあります。(シニア期の過ごし方③を参照)
このような高齢動物の介護生活をお一人で抱えている飼い主様を多く見受けます。もし、周りにこの様な方がいらしたら、一人で抱え込まずに病院スタッフへご相談いただければと思います。
シニア期の過ごし方の知識を持つことで、介護生活が大変だったけれど、やりがいがあったと思えるようペットのハッピーエンディングが迎えられるようにお手伝いができればと思います。
獣医師 淺井・看護師 牧野




